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権利証がない+委任の終了

所有権の登記をすると権利証(今では登記識別情報)が法務局から発行されるわけですが、
これを大事に取っておくように司法書士から説明を受けると思いますが、大事にしすぎて何らかの事情で紛失してしまった、あるいは共有持ち分や親等に任せていたのでどこに行ってしまったのかわからない等の相談を受けることがあります。

よく権利証を再発行してほしいと言われますがそれはできません。
所有権を移転する必要がなければ、個人の実印さえしっかり管理していれば問題ないのですが
移転する必要や担保を付ける必要になった時の手続きとして、

○事前通知制度 権利証のないまま登記手続きをし、法務局から所有者に対して本人限定受取郵便で登記手続きに間違いがなければ2週間以内に個人の実印を押して返送してくださいと通知が来るので押して返送する。

○本人確認情報の提供 司法書士等の資格者が本人確認情報を作成し登記手続きをする(この場合には基本的に法務局から通知が来ません)。

という方法になります。
本人確認情報を作成するとある程度の費用を負担しなければなりませんが、不動産売買でその場で決済し現金が動くので後日法務局からの通知を待っていられない時などにはこっちの方法を取ることになります。
時間的に余裕等があり、法務局の通知を待てる時には前者の方法を取ることになるのですが、今までの経験では期限内に法務局に返送してくれない方や実印を押して返送するように事前に説明しても認印を押して送ってしまう方が多いです。その場合には登記は却下されてしまいます。


登記手続きをせずに年数が経ってしまうと厄介なことも起こります。
町内会の土地を当時の代表者4名で共有持ち分とする所有権の登記をし、そのままになっていた土地がありました(最近は町内会でも登記名義人になれるようになりましたが当時はダメでした)。
その土地を現在の代表者名義にすることになったのですが(登記原因は委任の終了となります)、4名の方は既に亡くなっており孫の方々が50名ほどいます。まとまって近くに住んでいてくれればいいのですが、引っ越したり結婚をしたりで皆さんバラバラです。もちろんそのような土地があったことも知らない方々がほとんどです。

相談を受けた時には登記完了は難しいことも予想しましたが、そのままほっとくとさらに厄介なことになるので手続きすることにしました、ただし費用はかけられないということで前者の法務局の通知ということになりました。
はたして50人全員が登記申請後に法務局に対して個人の実印をちゃんと押して返送してくれるのか、本人限定郵便はその本人が身分証明書を用意して受け取る必要があるため入院している人がいたりしてその調整もあり難航しましたが、町内会の方も協力及び努力してくれて、事前の登記手続きの説明や連絡等も効率よくうまくいき無事に全員の返送があり登記は完了いたしました。

めでたしめでたし